checkbox4P戦略ついて

 

前回の編集後記で、マーケターという言葉の本当の意味について紹介した。

 

なお、マーケターについて詳しい記事は下記に記載しましたので、併せてご覧いただきたい。

 

 

今回は、このマーケターの役割について、事業承継の観点から考察していく。まず下の図をご覧いただきたい。この図は、中小企業庁による、経営者の年代別に見た後継者の選定状況に関するアンケート結果である。

 

 

50代の経営者においては、25%しか後継者の準備ができておらず、60代においては47・5%、70代においては59%という結果となっている。また、後継者が決まっている場合においては子息などが対象になるケースが多いが、その子息が事業を継ぐに値する能力を持っているかどうかは別の話だ。

 

では、後継者を選定あるいは育成する上で、どのような要素が必要なのだろうか。まず、現在の医療業界を取り巻く環境について理解いただきたい。下の図は日本の人口推移を示したものであるが、人口は2004年12月にピークアウトし、減少の一途をたどっている。これにより、美容医療や矯正歯科など、比較的若年層が主要ターゲットとなる分野では市場そのものが縮小しているのが現実だ。

 

 

さらに、日本は長らく続く実質賃金の低下や、物価の上昇により家計の可処分所得に伸び悩んでいる。特に若年層や子育て世代では、美容や予防的な医療にかけられる予算が限られがちであり、自費診療は贅沢品とみなされて後回しにされる傾向もあるだろう。したがって、次の図にあるように、今後、事業を承継する人間に求められるのは、カウンセリング力ではなく集客力なのである。

 

 

では、集客力とは何か。前回も触れたが、集客力とは、マーケティングの4Pの観点で、製品や価格戦略、ルート戦略などもしっかりマネジメントができる能力のことを言う。

 

 

集客に直結すると言われる広告戦略やホームページ、あるいはインスタグラムなどの領域しか見ていない場合は単なるプロモーターであって、事業を承継する能力はないに等しい。前号の内容を踏まえて言えば、マーケターこそが、事業を承継する能力を有する人間なのである。

 

 

実は、このマーケター領域においては、責任者としての肩書きも存在する。それがCMOである。CMOとは下の図にあるように、チーフ・マーケティング・オフィサーを指し、マーケティングにおける責任者を意味する。このマーケティング責任者が少ないということが、実は日本における大きな課題なのである。

 

 

下の図は、日本とアメリカのマーケティング責任者の数を比較したものである。アメリカでは62%の会社でマーケティング責任者がいるにもかかわらず、日本には0・3%しかいない。このような状況自体が日本の衰退を招いているのではないか。

 

 

特に、医療業界においてマーケティング責任者はほとんど存在しない。なぜなら、診療や医療技術の分野に関しては経営者自身が医師として現場経験を積んできている場合が多いが、患者の受け入れを促進する集客の分野については、経営者自身が十分な経験を持ち合わせていないことが多く、結果として体系的なマネジメントが確立されていないケースが少なくないためだ。

 

また、20年前のように、チラシを打てば反響が来る時代はよかったものの、IT革命によって集客がデジタル化したことで、経営者の把握できる範囲を超えてしまったことも、この20年間のツケとして起こっている。つまり、今後の事業承継の領域は、経営者にとっても、あるいは事業を受け継ぐ側の人間にとっても、営業力よりも集客力が求められるため、単なるプロモーターではなくマーケターとしての能力育成と開発が重要になってくるのである。

 

 

最後に

 

以上、今回は、医療業界の重要テーマとして「マーケター」の役割について見てきた。

 

医療業界においては、事業承継や企業の部門体制の問題から、近年必要とされる集客力に特化した人材を育てることに適応できない状況があり、多くの医院がその課題に悩んでいる。このような状況下で、マーケティング領域と集客について今一度見直し、正しい戦略を立てていくことが重要だ。一人でも多くの医療業界従事者の方々にとって、ノウフルが貴重な情報源になればそれ以上のことはない。

 

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