今回は、自費診療界における戦略理論の一環として、SWOT分析に焦点を当ててみたいと思います。
まず、下の図をご覧ください。ある病院理事長の悩みを記載したものです。
そろそろうちも中期経営計画のようなものを作る必要があるかもしれないな。
でもそもそも何から始めればいいんだろう。
戦略って言われても小難しくてよく分からないし。
3CとかSWOTってよく聞くけど一体何?
それを理解したところで売上が伸びるのかな?
一体戦略って何だ?
戦略や3C分析、SWOT分析などの言葉についてはよく耳にしますが、その実態や意味を完璧に理解している理事長は少ないのではないでしょうか。今回は、そのような院長向けに、SWOT分析を自費診療の観点から説明していきたいと思います。
では本日の目次をお示しいたします。
SWOT分析と戦略
そもそもSWOT分析とは何でしょうか。下の図をご覧ください。
SWOT分析は、自医院の内部における強みと弱み、そして外部環境における機会と脅威、これら四つの要素を一貫性を持たせた上でビジネスモデルを構築する考え方です。SWOTはそれぞれの四つの言葉の頭文字をまとめたものであり、手順には三つのステップがあります。
まず一つ目は分析です。下の図をご覧ください。この図は、ある医院での内部環境と外部環境をケーススタディとしてまとめたものです。
自医院の強みにはサービス力が高い・患者数が多い・技術力が高い・無借金経営・歴史が長いなど、さまざまな要素が挙げられます。一方で、弱みとしては、平均年齢が高い・IT整備ができていない・紹介契約数が低い・後継者がいない・採用力が弱いなどが挙げられます。
次に外部環境における市場の機会としては、補助金の増加・オリンピック景気・美容市場の流行・整形の嗜好品化・コロナ特需など、さまざまな要素が存在します。また、市場の脅威については、商圏での人口減少・働き方改革による採用難・原価高騰・コロナによる集客のデジタル化・IT技術の進化などが挙げられます。
これらの要素をまとめると、下の図のようになります。内部環境におけるプラス要因とマイナス要因、外部環境におけるプラス要因とマイナス要因がまとめられます。ここまでをまとめることが分析の一つ目のステップです。
次に、戦略の方向性を決めていきます。下の図をご覧ください。SWOT分析のどの要素を採用するかによってさまざまな戦略パターンがあります。
「積極展開モデル」は、強みと機会を積極的にに展開する戦略を指し、「差別化展開モデル」は、強みを活かして、脅威に向けて独走することを指します。そして、「段階的展開モデル」は、機会に飛び込み、弱みを補強しつつ攻める戦略を意味し、「消極的展開モデル」は、最大限に守りに入ることで安定した状態を維持する戦略を指しています。どの戦略オプションを選ぶかは、状況によって異なります。
下の図をご覧ください。こちらは、積極的展開モデルを採用した場合です。技術力が高く、美容市場が流行っていることから、美容エステ部門を新たに立ち上げるといった戦略です。
次に差別化展開モデルです。差別化展開では、自社の強みであるサービス力を活かし、市場の商圏での人口減少という状況に対応して新規エリアに出店することで、差別化を図る戦略です。
そして段階的展開モデルでは、紹介契約数が少ない一方で、補助金の増加が見込まれる場合、補助金キャンペーンを活用した紹介活動実施などが戦略になります。
最後に、消極的展開モデルです。自社の弱みは平均年齢が高いこと。さらに市場の脅威が働き方改革による採用難であれば、中途採用を強化する戦略です。
このように戦略的な方向性を決めることが、2段階目において非常に重要なプロセスです。また、ビジネスモデルを構築することについても考えていきましょう。ビジネスモデルについては、内部環境と外部環境におけるプラス要因マイナス要因を踏まえてビジネスモデルを作ることが重要です。
これについては、別の記事でより詳しく触れていますので、関心があればぜひご覧ください。
本日のまとめ
改めて、本日のまとめをお示しいたします。
SWOT分析にて、自医院の強み・弱み、外部環境の機会と脅威について把握する
戦略オプションには4つのパターンが存在し、状況に応じて適切に選択する
ビジネスモデルは、医院における内部と外部の環境とプラス要因、マイナス要因を意識して構築する
以上、本日は自費診療業界におけるSWOT分析に焦点を当ててお伝えしました。
このような戦略オプションの考え方は、将来的にますます重要になるので今のうちに戦略についてしっかりと考え、必要に応じて見直しを行っていくことが重要です。