今号もシン・マーケティング戦略核に沿ってさまざまなノウハウを共有した。

ここでも繰り返しになるが、一般的にマーケティングと捉えられている販促領域だけでは成果は出ない。シン・マーケティング戦略こそが重要である。では、そもそも日本において、なぜマーケティングが販促と誤って解釈されてしまったのだろうか。それは、マーケティングという概念をアメリカから日本へ持ち込んだ主体が、テレビCMなどの販促を手掛ける大手広告代理店だったためである。
大手広告代理店は大規模エステサロン向けに事業を展開しており、大規模エステサロンに適した形でマーケティングを解釈し、日本に広めた。当然ながら、大規模エステサロンは規模が大きいため、販促のみをマーケティングとして捉えても、他部門で施術体制やオペレーション管理などが行われるため問題は生じない。
しかし、日本のエステサロンの99.7%は中小規模である。これらの中小規模が大規模と同様に販促のみを行っても、十分な成果は得られない。このような誤ったマーケティングの解釈が何十年にもわたり定着した結果、マーケティングは販促のみの領域へと縮小化され、現在この領域にはレベルの低いベンチャービジネスが乱立する状況となっている。

というのも、販促領域はデジタル分野を中心に情報格差を取りやすく、参入障壁も低く、さらにはマネタイズがしやすい。例えばWEBマーケティングという領域においては、突如現れたデジタルという分野に関してデジタルを世代的に扱っていたというだけで、経営者から情報格差が取れる。そしてこの情報ビジネスは一次産業や二次産業と違い、事業化する上で初期投資がいらない。さらには、運用代行や保守という形でストックビジネス化が容易である。その結果、低レベルな企業でもビジネスを成立させやすい構造にある。十分なノウハウがなくとも、機動力次第でシェアを獲得できてしまうのである。
しかし、多くの経営者が認識している通り、販促はあくまで戦術であり、それだけで集客が伸びるわけではない。繰り返しになるが、シン・マーケティング戦略が重要である。販促領域には、広告運用やインスタグラムの運用代行、ポータルサイトへの掲載など、さまざまなサービスが存在する。
広告運用はすでにAIによる自動化が進んでおり、インスタグラム運用も単なる代行業務にとどまるケースが多い。ポータルサイトについても資料請求は発生するものの、来店につながりにくいのが実情である。こうした販促領域のサービスに対し、弊社ではさまざまな代行業務を数千円クラスで請け負っているが、インスタグラムの運用代行に月10数万円、YouTube動画撮影に数十万円、広告運用代行に予算の2割も搾取するケースがあることに理解ができない。このような情報の非対称性に依存した、搾取行為のようなビジネスは、見直しが必要である。
日本は「失われた30年」と言われるように、長期的な停滞が続いている。その要因の一つとして、マーケティングの誤った解釈があると考えている。そもそも日本人は「謙譲の美徳」という価値観を持ち、自らを積極的に訴求することを得意としない傾向がある。だからこそ、この日本においてこそ、正しいマーケティングであるシンマーケティングが不可欠である。
それにも関わらず、誤った定義のままマーケティングが広まってきたことが、この30年の停滞の一因になっていると私は考える。こうした状況の中で、シン・マーケティング戦略を広げていくことが私のミッションである。下の図にあるように、日本ではCMOという役職がアメリカと比較して圧倒的に少ないが、このCMOをシンマーケティング領域の責任者として増やしていきたいと考えている。これは私の人生を賭けた試みである。

このような正しい定義に基づくCMOが増えることで、日本は再び経済大国として復活できると信じている。

一方で、人生を賭けた試みといっても、日本には多数のエステサロンが存在する。全てのエステサロンにシン・マーケティング戦略インストールするには、直接支援は現実的ではない。ノウフル発刊の目的もそこにあり、すべてのエステサロンを支援することは難しいが、ノウフル自体を大規模発行することで広く届けることは可能だと考えている。
本誌を通じてシン・マーケティングの考え方を体得していただければ、それ以上の喜びはない。