
前回からノウフルにてコラムを連載しております、三浦あかねと申します。第二回もどうぞよろしくお願いいたします。本コラムでは、スタッフ教育を中心に、歯科医院経営に役立つさまざまなノウハウをお伝えしていきたいと思います。
では本日の目次をお示しいたします。
自費診療をどのように増やすのか
今回もスタッフ起点で実現する自費強化と離職率改善という観点からお話ししていきます。テーマは「自費診療をどのように増やすのか」、つまり自費診療強化の実践的なアプローチについてです。
皆様は、どのようにして保険患者の自費診療比率を高めておられるでしょうか。まず前提として考えなければならないのは、自費診療の価値を決めるのは患者様であるということです。私たちはあくまで情報を提供し、患者様が自ら選択する際の背中を押す役割を担うにすぎません。また、患者様は価値を認めたものにしかお金を払うことはありません。そのため、そこを踏まえた取り組みが非常に重要になります。
購買の三原則
まず一つ目の観点として大切なのは、メリットとデメリットをきちんと伝えることです。下の図にあるように、「保険診療は古いから自費診療が良いですよ」といった一方的な押し売りは逆効果になります。患者様は高額な治療を押し付けられたと感じてしまうからです。

このような考え方において重要なのが、購買の三原則です。購買の三原則とは、自由な取引を行うこと、対等な取引を行うこと、相手を尊重すること、の三つです。
この原則に立ち返ったとき、患者様から質問を受けた際の対応を改めて考える必要があります。多くの患者様は、他院での治療法やこれまでの治療法、また保険診療と自費診療の違いなどについて、それぞれのメリット・デメリットなどを事前に情報収集した上で来院されます。このような状況においては、次の三つのポイントを押さえることが大切です。
①サンドイッチ法の活用
サンドイッチ法とは、「メリット → デメリット → メリット」というように、デメリットをメリットで挟む形で説明を行う方法です。例えば「インプラントは見た目はよくなりますが、価格が高いです」と言ってしまうとメリット→デメリットとなり結果的な印象は悪くなってしまいます。「インプラントは見た目が良くなりますが当然価格は上がります。しかしながらそれによって美味しい物を孫たちと食べられるようになったと喜ばれる方も多いんですよ」とデメリットをメリットで挟むことで印象が良くなるのです。
②間を大切にする
緊張して早口になり、必要以上に多くの情報を伝えてしまう先生がいらっしゃいますが、これは逆効果です。落ち着いて話し、間を取ることを意識しましょう。また、間と間のあいだには優しい表情で患者様と向き合うことで、患者様に安心感を与え、信頼を得ることができます。
③イメージを訴求する
これは、価値を認めたものにお金を払うという考え方に基づくものです。そのためには、イメージ訴求が非常に重要になります。一方的に説明をするのではなく、その治療によって「どのようになりたいのか」というイメージを患者様と共有し、共感を通じて購買意欲を高めていくことが大切です。

例えば、「家族やお孫さんと一緒に美味しい食事を楽しむためにインプラントを検討する」「若々しく健康的な見た目を保つために審美治療を受ける」といったように、患者様がどのようになりたいのかという点をしっかりとヒアリングし、理想像を患者様と一緒に描きながら、ワクワク感を共有していくことが重要なのです。
このように、カウンセリングは自費診療の比率を高める上で非常に重要な取り組みです。しっかりとポイントを押さえ、患者様とのコミュニケーションを大切にしながら、自費診療の提案を行っていきましょう。
講師自己紹介 三浦あかね

【略歴】
看護師として公立病院にて脳外科、内科慢性期病棟勤務。接遇委員会立ち上げや接遇委員長を経て、下肢静脈瘤専門病院に師長として勤務。市民講座時には院長と共に講演。その後、健診センター立ち上げ責任者として勤務。
さらに、医療機関を遠隔でサポートする企業の看護部長として、医師の業務負担軽減のために、さまざまなサポートを提供。他、医療従事者向け研修の講師として活動しつつ、現在は、フリーランスで講師業と医院のコンサルティングサポートを行っている。
【資格】
看護師/アンガーマネジメントファシリテーター/医療経営士3級/エグゼクティブコーチ/医療メディエーター/日本マナープロトコール検定2級/医療接遇検定3級 /DSコーディネーター
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