
前回からノウフルにてコラムを連載しております、三浦あかねと申します。第三回もどうぞよろしくお願いいたします。本コラムでは、スタッフ教育を中心に、歯科医院経営に役立つさまざまなノウハウをお伝えしていきたいと思います。
では本日の目次をお示しいたします。
スタッフクロージングトークを学ばせるには
今回はクロージングトークをスタッフに学ばせるためにはどうしたらいいのかについて見ていきたいと思います。まず、自費診療を強化する上で、クロージングトークを展開することが非常に重要ですが、単に医師がそれをすればいいというわけではありません。
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スタッフ全員がクロージングトークを行える体制をつくることが極めて重要になります。なぜなら、私たちの価値観や姿勢が、患者様の受け取るイメージを大きく左右するためです。特にスタッフは、保険外の商品メニューや自費診療の提案、また患者様に費用負担をお願いすることに対して、どうしても罪悪感を抱きやすい傾向があります。
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その罪悪感という価値観が説明の言葉に表れ、「高い」という印象・イメージにつながってしまいます。例えば、「50万もするのですが、それが一万円なんです」と、「も」を多用したり、ボソボソ自信がなさげに話をしたりすることは、自費診療のイメージをネガティブなものとして、私たちが作ってしまっているのです。
スタッフが自費診療を避ける理由
なぜそのようにスタッフは、自費診療を避けるのでしょうか。それには三つ理由があります。
①業界の厳しさを理解していない
②キャッシュフローを学んでいない
③患者様のためという大義名分が強い
このような状況において、スタッフに対しては、当然ながら業界の厳しさを伝え、キャッシュフローを理解してもらい、患者さんのための自費というマインドセットをすることが重要です。
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まず一つ目の業界の厳しさについては、下の図をご覧ください。歯科医院の倒産や休業件数というのは過去最多を記録しています。歯科業界は厳しく、倒産が増加しているということをスタッフに理解してもらうことが自費診療を増やす上では重要なのです。

次に、二つ目のキャッシュフローです。クリニックで働くということは、「自分の給料を自分で稼ぐ」という考え方が重要になります。患者さんから保険料が支払われ、市区町村の国保などを経由し、審査支払機関にたどり着き、そこで医療機関に支払われます。しかし、支払基金の支払いが二~三ヶ月後になり、経営が厳しくなるということを理解しているかということが大事です。

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一方で、自費診療はその日に現金がもらえるということで、保険とのキャッシュフローの違いをしっかり理解してもらうことが重要です。患者さんが受診し、診療やカウンセリングを受けることで売上が発生し、その収入の一部がスタッフの給料になります。つまり 患者数や件数=利益金額 ということを理解してもらうことが重要なのです。
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最後に三つ目の「患者様のためという大義名分が強い」に関してですが、スタッフは医院より患者さんのためという大義名分が強いのが一般的です。しかし、自費診療を進める理由は、医院が儲かるからというわけではありません。患者さんが高いお金を支払う分、自費診療によって幸せな生活を実現するのです。しっかりとスタッフが一人一人理解することが重要です。
あるバンジージャンプのスポットでは、非常に満足度が高いと有名になりました。その理由は、インストラクターが「積極的に背中を押すから」と言われています。そのバンジージャンプのスポットのインストラクターは、参加者が飛んだ方が幸せだと理解しているから、堂々と背中を押すのです。

クロージングとは、まさにこの「背中を押す」ということであり、スタッフ一人一人が自費診療によって患者さんが幸せになるというマインドセットをすれば、このクロージングトークはさらに磨かれていくでしょう。
以上、本日はスタッフにクロージングトークを学ばせる三つのポイントについてお伝えしました。このような取り組みは今後さらに重要になっていきますので、是非とも体制づくりをしていただければと思います。
講師自己紹介 三浦あかね

【略歴】
看護師として公立病院にて脳外科、内科慢性期病棟勤務。接遇委員会立ち上げや接遇委員長を経て、下肢静脈瘤専門病院に師長として勤務。市民講座時には院長と共に講演。その後、健診センター立ち上げ責任者として勤務。
さらに、医療機関を遠隔でサポートする企業の看護部長として、医師の業務負担軽減のために、さまざまなサポートを提供。他、医療従事者向け研修の講師として活動しつつ、現在は、フリーランスで講師業と医院のコンサルティングサポートを行っている。
【資格】
看護師/アンガーマネジメントファシリテーター/医療経営士3級/エグゼクティブコーチ/医療メディエーター/日本マナープロトコール検定2級/医療接遇検定3級 /DSコーディネーター